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風・濃霧によるカモフラージュ・次々と突き刺さる弓矢のインパクト・武骨なコスチューム・騎馬戦闘等などのビジュアルは一見すると黒澤時代劇『蜘蛛巣城』を、炎の落城は『乱』を、身分違いの男女やラストの台詞などにみられる観念性は『七人の侍』の変奏をそれぞれ思わせ、スペクタクル性は申し分ない。しかし例えば『七人の侍』後編の最終決戦は、事前に図面や実地による検証を反復し、地形を観客に整然と理解させておくことで逆にマルチカメラによる目まぐるしい混沌が際立つ名クライマックスとなったのに対し、『レッドクリフ』は二大軍勢の直線的ぶつかり合いという明快な図式の割には、間者による図面や模型やパノラマショットの挿入にも拘わらず上陸後の両軍の位置関係をうまく提示できていない。黒澤の「ここぞ」のスローモーションやワイプには文脈上の確固たる意味(転調・省略等)があったのに対し、違った趣旨でただ漫然と繰り返される本作のそれは単なる装飾と堕し、上映時間を無駄に引き伸ばしている。幾重ものクロースアップ反復による心理の強調も過剰。小喬の決意などは本来ワンショットで事足りる。
【ユーカラ】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-09-05 21:10:53)
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