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成瀬巳喜男松竹時代の作品。この時代にアイドル映画という概念があったかどうかわからないが、この映画は水久保澄子のための作品といっていいかもしれない。悲劇の女優、水久保澄子。その大きい目は「ミツバチのささやき」のアナのように曇りがなく、力強い。小津安二郎「非常線の女」にも魅力的な役どころで登場するが、この映画での水久保澄子の魅力はそれをはるかに凌駕している。佇まい、視線、感情の起伏。60分足らずの上映時間、ずっと釘付けだった。成瀬の演出が見事なのはもちろんで、特に素晴らしいのは電車の中で明治チョコレートを食べるシーン。ここは本当に素晴らしい。いわゆる悲恋物語であるものの、後期の成瀬のような大人の雰囲気とは一風違う爽やかさに溢れていて、これがまたいい。水久保澄子のその後を暗示させるような(考えすぎ)ラストに胸を打たれつつ、またいつかスクリーンで照菊に出会えることを祈る。
【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-11-25 00:57:27)(良:3票)
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