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《ネタバレ》 「この世界には恐ろしいことがひとつある。それは、すべての人間の言い分が正しいということだ」、言うまでもなくジャン・ルノワールの、というか映画史上の大傑作「ゲームの規則」でジャン・ルノワール自身が放った言葉だが、その言葉の恐ろしさを絶対零度の冷たさでもって体現した作品がエドワード・ヤンの「恐怖分子」だと言えるかもしれない。優しさなんて、この映画には1ミリもない。優しさをみせてしまった者には過酷な運命が待ち受ける。そんなゲームの規則が繰り広げられるこの恐るべき映画、にも関わらず、いや、だからこそ見終わった後に実感する生の充足。「生きる」ではなく「死にたくない」へと向かう方向性に、クリント・イーストウッドのこれまた恐るべき「ミスティック・リバー」が思わず重なる。ラストの嘔吐には、新たな恐怖分子の誕生を想起してもいいかもしれない。しかしそれよりもなりよりもこの嘔吐する女である。嘔吐する女といえば、これまた再び恐るべき「ヴァンダの部屋」において、ヴァンダが激しい咳をしていると突然ゲロを布団に吐きだすシーンが鮮烈だったが、この「恐怖分子」の嘔吐の場面もまた忘れがたい。布団から上半身を起こした時に見せる定まりのない目線、そして突然口元に手を押さえそのまま体を床の方へ折り曲げるまでの一連のアクション。こうして吐き出された吐瀉物は(といっても画面上には出てこなかったのだが)、風呂場にて自死を遂げた男の後頭部から脳漿とともに垂れる血液のような粘性を持っていただろう事は容易に想像できる。
【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2008-01-10 22:31:13)
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