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前半の2話は、まあいわゆる限界状況サスペンスの典型みたいな話であり、娯楽性にも富んでいて楽しませるがこれらは別に大友でなくとも作れるレベルの作品だと思う。問題は3つ目。大友の作品にはその背景に必ず国家がある。この国家はかなり曖昧だ。全体がみえてこない。ただ、何らかのシステムによって支配されているということはわかる。そして、それは人間による人間の為のシステムであるに違いないが、大友の場合このシステムが突然自己生成を始める。それらは例えばAKIRAであり、暴走した介護用ベッドであったり感情の振幅によって殺戮能力の変化する人体兵器だったりする。これらのシステムは最終的に国家に対して復讐を行うわけだが、この辺が大友作品の痛快な部分なんだと思う。この「大砲の街」はわずか20分ほどの短編であるが、国民が総動員で大砲作りに従事している街の一日という恐ろしい寓話となっている。ここでもやはり彼らは何のために、そもそも誰に対して大砲を打ち込んでいるのか分からない。で、やはり大砲を作るという「システム」に対しては徹底的な描写(それは蒸気の噴射や計器の振れに至るまで!ここを見ないと大友を何も見ていないのと同じ)をこなしている。この短編ではシステムの描写のみで話が終わるが、人々は完全にシステムに組み込まれ、彼らを統治しているであろう王様を疑うことすらしない。しかし実のところこの大砲を発射する王様が本当に支配者なのかも定かではない。彼でさえシステムの中に組み込まれた一要素だと言える。そんな機械のような人間たちと対照的に、生き物のように敵国に向けて砲弾を飛ばす大砲。この終末観は、アナログへの偏愛ともいえるほどの執着でもってただのメルヘン世界で終わらせない鋭さを纏っている。街への爆破を予感させるラストのサーチライトとともに。点数は1話7点、2話7点、3話10点という配分を平均したもの。
【Qfwfq】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-04-27 15:54:29)(良:1票)
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