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《ネタバレ》 これは人間の心理状態というものを色で表している。山本富士子演じるヒロインが想いを寄せる大学教授竹村(上原謙)に初めて身体を許すシーン、画面全体のあの赤い色は山本富士子の演じる女の情熱を表していると思いました。好きな男にはきちんとした奥さんもいれば、娘もいる。山本富士子が相手の奥さんが病気で亡くなった後に上原謙に対して別れを告げるシーンでは青が強調されているが、あれは自分は女としてのプライド、誇りをかけて愛した男との別れを選ぶ。それは女としての辛さを青い色として見せているようにも感じるし、その色使いの見事さ、美しい映像は宮川一夫という日本映画史上最高の名カメラマンによる功績が大きい。主演の山本富士子の色気、黒髪を洗う場面のあの色っぽさ、心が強くて誇り高い京女としてのプライドの高さを見事に表現して見せた演技なくしてこの映画は語ることは出来まい。そのぐらいこの映画の山本富士子は素晴らしい。小沢栄の酒癖が悪くて口も悪い嫌な男に何を言われても負けまいと強い女を演じている姿など正しく強い女の象徴である。小沢栄のご機嫌取りを飄々と演じている山茶花究の姿も忘れがたい印象を残します。山本富士子と上原謙との初めての夜のあのシーンにしてもちっとも嫌らしさを感じない。男と女が抱合う場面の色気、全くもって嫌らしさを感じさせずにそれでいて官能的に見せる演出の上手さ、ここらが昨今の日本映画にはなくて昔の日本映画にはある。この映画を見ると益々そういう気持ちにさせられる。裸になどならなくても伝わる女の色気と愛情、その伝え方、こういう映画を見て昨今の日本の監督は大いに勉強し、見習って欲しい。映し出される京都の街並みの美しさ、宮川一夫のカメラ、そして、やはり山本富士子の美しさ、この映画は何かもが美しい。ラストの山本富士子の表情には女として自立し、強く生きて行くことへの思いが現れているようです。
【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2008-10-05 21:51:03)
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