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サイレント作品ですから耳をつんざくようなキャーキャーというけたたましい叫び声は聞こえませんし、生々しい血がドクドク流れるわけでもないのですが、これが怖いのです。面白いのはノスフェラトゥはコミカルな場面では異様に素早い動きなのに、襲う場面はいたってスローになるところです。通常は〝静〟から〝動〟への転換でアッと言わせるものです。例えばセンサーに反応して人形が突然飛び出してくる安いお化け屋敷のように、あるいはティーンエイジャー向きのホラー映画の殺人鬼ように。しかし、よくよく考えてみればこの〝静〟から〝動〟で感じさせるものは〝恐怖〟というより〝驚き〟に近いです。擬音で表せばびっくりの〝ドキドキ〟であって背筋が寒くなる〝ゾクゾク〟ではありません。つまり純粋な意味での恐怖ではなく驚きが多分に混在した感情なのです。ですが、本作はそのドキドキではなくゾクゾクを見事に感じさせてくれます。つまり本当の意味での恐怖。ノスフェラトゥのあのシルエットと動きの不気味さ。ネズミの使い方の上手さ。これは純粋恐怖映画の教科書のような作品です。
【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-07-02 18:07:32)(良:2票)
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