| 作品情報
レビュー情報
【4K修復版で鑑賞。】
チネチッタは最近…メェ――ッチャ好みだ。 観たかった映画が。これでもかとリバイバルされてる。 2001年宇宙の旅も、七人の侍も全部面白かったなー。 つー事で、今回は古い映画に。 何でも4K修復されてるとの事で気分がグングンと入ってくる。 ――戦場のメリークリスマス(1983年) この映画は、既に何度か観ているんだが…痛感した事。 それは、観ている映画でも「(一定以上の)時間を経過」させると印象がガラリと変わる。 別に自分の事を偉く言うつもりは無いが、きっと「観なかった期間の、人間的な成長」がそれを感じさせるのだろう。 今まで、それを強く感じたのは映画版の「機動戦士ガンダム」だ。 最初は赤い彗星シャア・アズナブルのカッコ良さに惹かれ、凄く好きになる。 けど、大人になって「下の者を引っ張る立場」になれば、ランバ・ラルの責任感と、実直かつ老獪な仕事への取組みに惹かれ… そして、「さり気なく難関な仕事を熟す」マ・クベに対して(嫉妬も半分含め)素晴らしい男だなー、なんて考える。 何より、結婚したり、子供が出来ると余計に胸に来るシーンは、ブライトとアムロの母のシーンだ。 息子であるアムロを預かり、彼の母に対して「息子さんをお預かりします!」と凛々しい言葉を残すのが、20歳を超えてない青年ってのが、否が応でも「戦争の悲惨さと非情さ」を表現している。 さて、その――「戦争の悲惨さと非情さ」だ。 本作、戦場のメリークリスマスは相当に訴えていた。 設定の秀逸さも素晴らしいが、戦争映画とセットになりがちな流血沙汰はあまりなく、それよりも「精神的に追い込まれてゆく様」の描写が凄まじい。 では、追い込まれてるのは誰なのか? それは「捕虜」たちだけではなく「日本軍の者も」だ。 人間的な好き・嫌いはあるだろうが…観た人、観る機会がある人は考えて欲しい。 作品の日本兵は誰もが軍務に忠実なのだ。 俺の持論ではあるが、「自由とはサボる権利を有してる事」と思っている。 この映画では、誰もサボる事なく任務に就き…それ故に悲惨な状況が次々に発生する。 そんな中で、常に現場的に対処して苦悩するが故に、日本兵が悲惨さを引き起こすトリガーと成ってしまう。 この体系を作った上の人間は、この悲惨さを知っているのだろうか? 劇中でデヴィッド・ボウイの幼少時代が描かれている。 子供の頃から、歌う事が好きな弟を護って来た彼なのに…弟が自分の通う高校に入って来た時に新人歓迎の”イビり”に遭遇する。 服を脱がされ、無理に歌わされ…弟はそれ以降、歌う事が無くなった。 勿論、それ以上の悲惨な光景はなかったが、それ以降は弟ととの距離が出来てしまい苦悩する。 助ける事が出来なかった…いや、助けなかった彼は、ずっと自分の行為を悔いている。 今は捕虜にされてる戦場だというのに。 人はそれぞれ、そんな悔いと共に生きているはず。 それは敵対するイギリス兵だけじゃなく、日本兵もみんな同じだろう。 そして、それが「戦争という括りの中」で、平等に与えられる人間の所業だ。 誰もが苦悩し、苦しむ…なのに、それを引き起こすのも人間。 たけしが演じる「ハラ軍曹」が見せるラスト。 「メリークリスマス!Mrローレンス!」 明日、処刑されるのに笑顔のハラ軍曹。 狂気なのか?後悔なのか? それは、まだ…今の俺には分からない…未熟だ、俺は…。 けど、祝うべきクリスマスを創ったのも戦争を起こす人間なのは解る。 戦争を起こすのは人間。 終戦後、強引に敗戦国を裁くのも人間。 忠実に軍務に励もうが…関係ない。 反論させない為には命を奪って処刑するしかない。 だが、デヴィッド・ボウイが見せた坂本龍一へのキス。 憎しみと醜悪の戦場の中、愛のキスを彼に示した事…。 それこそが、あの映画のテーマなのかも知れない。 そして――あの映画音楽。 この美しい調べの中に…うん。 人間が向かうべき場所が示されているのかも知れない。 また、何年かした後… 俺は、その場所をこの作品で探したい。 見つかると信じて。 * * Blue Jean(Official Video)を聴きながら。 . 【映画の奴隷】さん [映画館(字幕)] 8点(2023-01-18 23:23:32)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |