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ミッシング・チャイルド・ビデオテープ のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
製作国
上映時間104分
劇場公開日 2025-01-24
ジャンルドラマ,ホラー,サスペンス,ミステリー
レビュー情報
《ネタバレ》 これから書くのは私の勝手解釈。毎度の話で恐縮ですが、誤読や頓珍漢あると思いますがご容赦ください。またネタバレありますので未見の方はご注意願います。

山の怪異。神隠し。物語の発端は主人公の弟の失踪でした。13年前のこと。また主人公の同居人(塾講師の男性)も弟君と同じシチュエーションで姿を消しています。この2人に共通するのは「ビデオで撮影された」ということ。ここからひとつの仮説が浮かんできます。
ビデオとはいわば「活動写真」。ご存じのように写真が普及するまでは「魂が抜かれる」という噂話がありました。もちろん迷信。ですが、全くのデタラメではなかったとしたら。2人が消えたキッカケとして「ホームビデオに写された」が考えられないか。もう少し突っ込むなら、カセットテープに音声を吹き込んでいた大学生パーティも同じく姿を消しています。ビデオやカセットテープは自己の複製品。魂も複写されるため「魂が抜ける」=「あの世に連れて行かれる」のではないか。と自分で振っておいて何ですが、これは必須条件ではありません。あくまで「魂が抜けやすくなる」だけ。例えるなら「寒空で薄着だと風邪をひきやすい」程度の話と考えます。ビデオが発明される遥か昔から神隠しは存在しますから。
では「神隠し」=「あの世に連れて行かれる」必須条件とは何でしょう。それは「人外の者が見えること」では。弟君言うところの「ぷよぷよ」であり、おそらくは神の類と思われます(以降、人外の者=輪郭がぼやけたヒトガタを神と呼びます)。神を認識したことで、2人は連れて行かれた。旅館の倅も山で神の視線を感じ取ってしまい連れ去られています。そういう意味では「見える」女記者は廃墟に辿り着いた時点でほぼ詰みでした。しかし彼女は助かった。いや助けられた。彼女の腕を掴み、2階に上ることを阻んだ手は神ではなく男の手でした。おそらくは主人公の父親。父親はずっと彼女に「息子を助けてやってくれ」と懇願していましたから。もし彼女があのまま2階に上がっていたら、間違いなくアウトだったでしょう。では主人公が二度に渡り、廃墟から生還できたのは何故か。それは「神が見えていなかったから」もう少し正確に言うなら「見たくないものは見えない」状態だったから。強烈な自己暗示。これは母親の死体に気付けなかった事実で裏付けられますし、おそらく13年前も同じことが起きています。絶対に見たくない弟の死体には気付けなかった。なお「見たくないものは見えない」を裏返すと「見たいものはよく見える」とも言えます。冒頭のエピソードで迷子を発見できたのはこの能力が活かされた為かもしれません。
最後にラストの解釈。女記者は「署名記事」という、ビデオやカセットテープに近い「自己複写」作業をしていますので、魂を抜かれ易い危うい立場にあります。また自室で同居人の気配を感じとった主人公は、ビデオに撮影されていました。撮影者は同居人でしょうか。残念ながら連れて行かれるフラグが立ちました。以上です。

BGMで過度に煽ったり、いわゆる「お化け屋敷」系の脅かし演出が無いのは好印象。地味といえば地味ですが、終始画面から緊張が消えずホラー作品として品質の高さが窺えます。この作風を今後の邦画ホラーのニューノーマルにして欲しいとさえ思います。ただあまりに「卒がない」ため面白味には欠けるかもしれません。例えば「日本ホラー映画大賞」内で比較するなら『みなに幸あれ』より断然本作の方が完成度は上ですが、手堅く万人に7点の本作に対し『みなに幸あれ』は刺さる人には10点の価値があると感じます。どちらが魅力的かといえば、個人的には後者を推したいのです。
目隠シストさん [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-08 22:26:35)(良:1票)
その他情報
作品のレビュー数 5件
作品の平均点 6.80点
作品の点数分布
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作品の標準偏差 0.40
このレビューの偏差値 62.50
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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