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《ネタバレ》 久しぶりにいい作品を見た。本作は有名な(しかし自分はあまり評価していない)「十二人の怒れる男」のパロディであり、また自分のあまり得意ではないコメディ調ということもありやや不安視しながら見たが、そうした不安は杞憂に終わり、日本人というか人間をよく描き出している作品だと思った。
■「怒れる男」が「一人除き全員有罪」から出発するのに対し、こちらは「一人除き全員無罪」からの出発。しかも理由が「被告人が美人だから」「可哀想だから」という議論をする以前の状況。しかしそうした心情も一方では理解できるものでもあり、なかなか興味深い。 ■また、「怒れる男」がフォンダによって有罪を一人一人無罪に切り崩していくという展開で、変化も「有罪→無罪」の一方向なのに対し、本作は有罪と無罪を一人の人の間で行ったり来たりして、「人間の考えは簡単に変わる」ということがよりよく表れている。 「怒れる男」がそのため基本的に「フォンダ=ヒーロー=正義」的な位置付けであったのに対し、本作は軸となって仕切る人物が次々と交代していき、展開も目まぐるしく変わって、より現実的である。今まで全然筋の通った意見を言えていなかった人が核心を突く指摘をしたり、今まで理路整然と話していた人が少し不利になるといきなり感情的になったりと、「議論で制圧する」よりも「一人一人の話を真摯に聞く」ことの重要性を訴えているように思う。 ■結果的に見れば、無罪から始まって無罪に戻っているわけだが、議論の過程によってさまざまな「見落とし」や「偏見」が明らかになり、そして論拠を明確にしてきちんと納得する形で結論に至ったという点で、「結果が同じだからいい」のではなくて「その結果を支える論拠は何なのか」という部分の大切さをも、この映画は伝えているように思う。 ■一つ難を言えば、しかし最終盤は基本的に弁護士「役」によって突き崩して決していく展開で、あれを一人の人によってではなく色々な人の「気づき」の積み上げでいければなおよかったように思う。特に最後の「あなたの奥さんが裁かれているのではない」というセリフは、弁護士役によってではなく他の、最も目立っていなかった人によって言われるとより効果的であったように思う。 ■とはいえ、十分に見ごたえのある作品であった。 【θ】さん [DVD(邦画)] 10点(2013-02-24 23:52:52)
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