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ポール・ハギス監督は以前から注目していたが、本作は、軍の陰謀が絡んだりする安易な反戦モノの印象があり、今までスルーしていた。知ってはいけないイラク戦争の秘密を知った米軍兵士の若者が殺され、彼の父親がその事件の背後には軍が絡んでいることをかぎつけて組織の闇を暴く!みたいな。そもそも邦題が酷い。イラク戦争関連で「告発」と言う言葉を安易に使われたら、誰だってそう思う。でも、この映画には告発など無い。あるのは息子を失った夫婦の深い悲しみとその死にまつわる衝撃的な事実だけだ。間違いなくこの映画は反戦映画なのだが、その伝え方が非常に巧みであり、僕の心に響いた。
この映画を観て、戦争に行くと言うことは、会社で仕事をするとか、結婚するとか離婚するとかと全く同じレベルの事象であり、ただその心理的ストレスが半端なレベルじゃないという点だけしか異なっていないんだということを痛切に感じた。そして、同じ職場で同じ上司の下で同じパワハラを受けながら仕事をしても、一方はメンタルを病み、一方は平然と仕事を続けるように、戦争に行って、ある者は脱落し、ある者は耐え抜く。ただ、そのストレスに耐え抜いた者は「殺人」や「暴力」に対する感度が確実に下がり、その影響が顕著に現れる者もいるのだろう。 「戦争」が非日常ではなく日常であることの怖さを、この映画はリアルに映し出している。ラストシーンも主人公の心象風景を表すにはあまりにもぴったりで、監督の手腕を感じた。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-06-05 19:19:02)(良:4票)
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