| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 かなり多くのテーマを内在しながらも、それらを重すぎないタッチで描き切った良作でした。タイトルと予告編を見る限りではかつて幼少期に手放した息子を探すヒューマンものかと錯覚しましたが、ふたを開けてみると宗教やジャーナリズム、移民、同性愛、といった様々なトピックが入り組んだ実話を、抑制の効いた展開で見せてくれる小品でした。
メインテーマはやはり規律と伝統を重んじるカトリック教会な犯してきた「罪」にありますが、人がおもしろがりそうなエピソードをとってつければ「記事」という名の商品を量産してしまう現代のジャーナリズムのあり方も描かれている点に、わずかながら興味と好感をもちました。ジュディ・デンチの安定感ある演技はもちろんのこと、当初のやっつけ気味なスタンスから想定外の展開に徐々に熱量を高めていく記者をスティーブ・クーガンが好演しています。 本作は「宗教など幸せな人生には必要ない」と言い切る記者の視点で進むため、宗教や修道院はいかにも閉鎖的で悪者として描かれていますが、本当に彼らを全面的かつ心の底から糾弾してよいものなのか、個人的には腑に落ちない部分もありました。私自身は無宗教ながら、宗教が人の生活に与えてきた影響や歴史は否定できないものがあります。破壊活動に手を染める盲目的かつ危険な集団が宗教の名のもとにいくつも結成されてきた一方で、人がもつ道徳観や秩序が様々な宗教の影響によって作られてきた歴史もまた事実です。 カトリックのように一見まともな宗教であっても、頑ななルールと判断基準をもつ信者やその行動が、移ろいの早い現代の時流に照らすと時代遅れに見えたり、異常に見えたりすることは出てきます。ただ敬虔すぎる精神を持ち合わせるがゆえに現代社会の中で正しい判断ができなくなっている宗教家もまた、ある意味では被害者なのかもしれないと感じる部分もあります。どう社会と宗教はギャップを解消していくのか、「裸足の季節」を見たときにも陥った虚無感が本作の鑑賞後にも残りました。 【Thankyou】さん [DVD(字幕)] 7点(2018-02-13 00:51:44)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |