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《ネタバレ》 アニメならではのファンタジックな描写と、主人公の仕事と、人生の物語があまりにもアンバランスで、作品として破綻していた。残念なことにアニメーションである必要性が微塵も感じられなかった。
不可解な点はいろいろある。なぜその時代設定で、わざわざきわめて裕福な一握りの人間の、しかも天才の、そのうえ時代錯誤な悲恋の物語にしなければならなかったのか。とか、「省略の文化」にかこつけて、小説のセリフを薄っぺらくなぞっただけで終わらせたのか、とか。色々な事情が省略されすぎて、「生きねば」の説得力が皆無だったとか。 実はいやな予感は冒頭からあった。 冒頭、震災のシーン。蠢く大地の迫力と、肉声の効果音の気味悪さに、これを3.11の後に撮ったのだ、と監督のクリエイターとしての誠実さみたいなものも感じた。が、すぐに失望した。 大火事が起こって大勢の人間が死んでいくその日に、親友は本を運び出して「ひどい日に戻ったな」。主人公はタバコ吹かして、白昼夢。家が倒壊して大火事になればどれだけの人死にが出るか、成人した人間は想像がつく。 創作にそんな感情を持ち込むなと言われても、あれだけ力を入れて地震を描写しておきながら、こんなシーンが出てくるわけだから、この登場人物たちには下界のことよりよほど大事なことがある、つまりは「殿上人」だと宣言しているわけだ。胸糞悪いったらない。 ヒロインのはた迷惑ぶりもすごい。結核の女が見ず知らずの家に居候。うつったらどうすんの? 身内からも忌避される、あの時代、そういう病気でしたよね? 挙句の果てに忙しく立ち働いてる家人のそばに来て、「散歩に出る」神経がいっちゃってる。何不自由なく搾取してきた金持ちの発想そのものだよね。 いちいち引用される詩も、あまりにひとりよがりで失笑。主人公は極めて自分に都合の良い人間関係の中でだけ、生きているんですね。それがあの天才だったに違いない、監督の人生観かな。若くしてあれだけ成功したら、そうなっちまうのも当然かもしれないね。 とうとうこんなものを作ってしまったか。これが全世界で公開されると思うと、正直ぞっとする。莫大になりすぎたジブリブランド、駿作品の影響力の大きさをマイナスの意味で危惧した。好き放題やりやがって! 【nadiend】さん [映画館(邦画)] 3点(2013-07-24 00:55:06)(良:5票)
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