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河原崎長十郎は映画俳優としてさしてうまい人じゃないと思うんだけど、その不器用さが主人公の不器用さと重なって面白い効果になっていた。ボーッとした表情。一番いいのは仲間のカンパを盗まれちゃって飯田蝶子にやりこめられるとこ。カンパシーンはややしらけたが、ちゃんと理想だけではない厚みを描いたのね。そして飯田蝶子の、優しさと厳しさを合わせ持つうまさ。「こんなことだろうと思ってた」と仲間に呟かれるつらさ。理想を謳うだけじゃなく、たえず現実とのギャップを提示している。だからといってどうすればいいという案はないのだが、声援を送る姿勢だけは続けようという決意を感じる。ラストの子を助けるシーンは、社会の問題をこういう形で結論づけてしまってはいけないだろうとは思いつつ、けっこう感動してしまった。ブランコをこぎまくる部分の怖さ・やりきれなさが出てるからいいんでしょうね。ロケシーンに時代の空気が匂い立っている。イタリアのネオリアリズムに触発されたのはアリアリだが、こなれているし、戦前からこういった路線は日本にも『綴方教室』などあったはずだ。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-11-10 09:44:10)
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