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どうやら本物の遊牧民の一家を使って、ネオレアレズモのように撮影したよう。子どもたちだけのシーンなど記録映画風でそれは分かるんだけど、ちゃんとストーリー展開にも子どもは関与していて、そこらへんの自然さに驚かされた。本物のお父さんやお母さんと一緒だから緊張しないでいられるんだろうけど、いわゆる子役の臭みはまったくなく、記録のようでいていつのまにか民話風世界に滑り込んでいる。映画における理想的な演技がここにはある。羊の糞を背中の籠に「入れられない」演技などは、指導したのかたまたまなのか。風景が美しく、いわゆる「映像詩」ものになってしまいそうなところを、彼らの生活の描写が太い芯になっていて手応えを作っている。チーズを作りながら「反らした掌の指の付け根のところは噛めないでしょ」と諭すシーンやゲル解体シーンなどいい(観ながら真似をして噛もうと試みたが張った皮膚の上を歯が滑って出来ない)。犬が物語に絡んできて、それは捨てられた牧羊犬らしい。牧畜業の衰退が低音でずっと響いており、その犬を番犬とする定住生活も出来ないところに、時代のきしみが聞こえてくる。選挙公報の車は、遊牧民に定住を促す声でもあろう。そして全体が、時代のきしみ音を立てながら、老婆の語る「犬の恩返しもの」の民話の世界に溶け込んでいくような作りになっていて、きれいにまとまった。
【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-07-05 09:21:10)(良:1票)
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