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《ネタバレ》 候補者本人は、体育会系の世界だ、と言ってて、たしかに路上パフォーマンスの日々なんだけど、なんか私は、選挙道という家元制度の世界を感じたな。もうすべてにわたって型が出来てるの。街宣車では3秒に1回名前を言え、とか、握手をするときは最後に相手の目を見てしっかり握り締めろ、とか(これなんかもう日本舞踊の所作ごと)、妻と言ってはいけない、家内と言え、とか(「家内がおっかないもんで」というダジャレを講演会で使える)、家元である党が決めたその型に乗り、候補者はただ印象の好さをアピールするだけで運ばれていく。言うことは「改革に取り組む」と「小泉自民党」と名前のみ。通勤時の朝、駅前に並んで「いってらっしゃいませ」と次々に頭を下げるのは、まさに歌舞伎のつらね、いっそ割りぜりふにしてくれたらもっと良かっただろう。完全に家元主導で、だから候補者も「ここまで面倒見てもらってるんだから、造反なんてとんでもないことなんだよ」と釘を刺されている。けっきょく候補者が一番気にしてるのは、有権者よりも党や地域のボスたちなんだな。選挙の時の電話戦術って反発を招きこそすれ効果あるのかなあ、と昔から不思議に思ってた。もしかして対立候補が嫌がらせで名前をかたって電話かけてるんじゃないか、と疑いさえした。でもこれ見て分かった。あれ、事務所を活気づけ、ボスたちにちゃんとやってますよとアピールするためにやってたんだな。だから一方的に電話をかけられる有権者の迷惑なんて関係ないんだ。そもそも平気で騒音まきちらす街宣車ってのが、それなんだし。とにかくこの映画、いろいろ裏が分かって面白かった。事務所でのおばさんたちの自然な会話も楽しく、公明新聞タダでいいからってとらされちゃって、とか、共産党に場所貸したら党本部から叱られちゃって、とか、カメラが全然意識されないまでに溶け込んでいる成果だろう。気のふれた女の人が事務所の前でニコニコ笑ってる、なんてのも(画面には出てこないけど)、なんか選挙の躁病的な賑わいにふさわしいエピソード。
【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-04-08 12:27:14)
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