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古い劇映画は当時の記録映画としての意味も持ち、その意味でこれは「あの時代の日本人の自分勝手なエエカッコシイの精神」を知るに優れていた。兄的な立場、我慢している立場、そして教育者という立場。そのままあの戦争の大義に重なる。「白人に支配されているアジアを、アジアのなかの兄さんである日本が、もう我慢できずに解放してやるのだ」。現実にある抗日運動に対しては、一応上海で日本人が傍若無人に威張っていることは認めざるを得ない、そこにある現実だから。それは認めてそういう「一部の不届きな日本人」に説教する。でこちらにひとつ負い目を負わせておいてから、李香蘭の方には「抗日運動は目隠しされた愛国心」だと言えば、これを観ている日本の観客はその二つで釣り合いを取ってしまう。全然レベルの違うものを釣り合わせて、納得させる。李香蘭の崩れた旧家と、日本の兵士の戦死。そういったゴマカシの釣り合わせの果てに「だからこそ手をつながなければならないのよ」となってしまう。そしてそれを情緒のレベルで許してしまう日本人のいい加減さ。ひどい話であるが、そのひどさを平気で生んだ当時の日本人の精神が、この映画にはしっかり記録されていて貴重。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-06-04 09:56:35)
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