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これは父一人娘一人の西洋版『晩春』でしょう。娘の「恋を恋する描写」や、背伸びした微妙な揺れ具合などにかなり割いてはいるけど、ずっと底に流れているのは父離れが出来ない一人娘を持った一人親の父の気持ち。「もちろん娘の幸せを第一に考えている、娘がこれと決めた男と一緒にしてやりたい」と思っているだろう父に、こんな相手でもか、と最悪のケースをあてがってみた話だ。娘の弾く楽器がチェロで、これはまさに父親的な楽器、それを抱きかかえるように練習する。ファーザーコンプレックスそのもの。だから現われる男は父親世代のゲーリー・クーパーでなければならず、哀れなボーイフレンド・ミシェル君は、女性的なフルートを吹いている。勝てっこない。娘が片付いたあと、駅からチェロを運び帰るのは父親の役割りになる。映画としての楽しみは、ジプシー楽団が傑作で、ホテルの部屋の隅で演奏してるだけでなく、湖上ではボートに乗り、そしてラストの雨のホームで決まる。酒が部屋のなかを行ったり来たりする場面もいい。リアルなラヴストーリーではなく、薄汚い仕事をしながらも娘を大事に養う「父」というものの覚悟を描いた映画と思いたい。
【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-12-07 09:30:42)
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