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シリーズ3作目。闘争の現場に徹した1時間に満たないニュースフィルムに近い作品だが、気を張っている顔が画面に溢れている点では、シリーズ中、一二を争うだろう。その気を張っているのも、自信でそうなっているのではなく、不安に追い立てられてなのだ。自分たちが農民でいられなくなるかも知れないという不安。そのとき彼らは、土のほうへ土のほうへと体を投げ出していく。地面に座り込み、測量のために打たれる杭に身を投じる。糞尿の入ったビニール袋を手にして。戸村委員長が機動隊が行なった横暴について演説するときの「おまんこ」と言う発音の滑らかさ、ごく自然に座り込みに加わる妊婦、そしてこの糞尿弾。この短い映画に次々と現われてくる素材が、「百姓」の生活がいかに生命の「第一義」的なものと密着しているかを示していく。彼らの不安は、その密着から引き剥がされるという生理的な次元にまで至っているのではないか。そういう生命の「第一義」的な面を隠蔽していくのが清潔な近代社会だった。それはそのまま第三次産業が第一次産業を埋め隠していく戦後史とパラレルである。この三里塚で反乱を見せたのは、その隠されていたものたちだったと言えるだろう。無理を重ねた近代がいつか剥き出しにしなければならなかった不安である。人がそのように不意に歴史と向かい合わされたとき、どのように気を張った顔を見せるのか、このフィルムはその記録であるとも言えるようだ。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-01-20 12:07:58)
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