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《ネタバレ》 行きたいところになかなか行けないバスの旅、っていうブニュエルの基本モチーフが全編展開。じらされ続ける主人公。バスの中では家畜がうろつき回り、お産もあれば棺も担ぎ込まれ、当然主人公は夢も見る。バスの中に樹木が繁り、果実の皮が誘惑する女とつないだかと思うと、その皮は母親が銅像のような台の上で剥き続けている、ってな夢、運転手やほかの乗客たちがバンドを組んでBGMを流しているのがおかしい。でも一番ブニュエル感じたのは、バスの運転手が、ちょっと寄っていってくれと、自分の母親の誕生パーティに乗客を招待する展開。主人公をじらす段取りを次々に仕組んでいった果てにこれがくる。この発想はなかなか出来ないよ。乗客の一人がスピーチして、トリオ・ロス・パンチョスって感じのが歌い出し、みなが踊る。ひとり主人公だけがヤキモキする(主人公が急いでいるのは、母親の危篤に関してで)。ブニュエル映画において宴のモチーフってのは繰り返されるが、これなんか忘れ難いシークエンス。でドラマとして見ると、新婚の主人公は女の誘惑に負けちゃうし、そのために大事な時に間に合わないし、悪辣な兄弟に対抗するためとは言えこっちもちょいと汚い手を使うし、と普通に予想される展開から微妙に踏み外している。この微妙に引っかかるストーリーとは別に、全体のトーンから踏み外したような死児の顔の厳粛なアップの映像も引っかかった。単に母の状態の予告ってこと以上に、この作品全体を包み込む重要なカットだった気がする。あの映像で、『昇天峠』という題名も膨らんでくる。
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-03-29 12:03:55)
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