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《ネタバレ》 地方を舞台に、熱血青年が古い因習に挑む、ってのは「坊っちゃん」以来の日本物語の定型で、「先生」と呼ばれる聖職ってのも大事なポイントなんだろう。イイモンはやたらかっこよく、ワルモンは俗物臭ぷんぷん。物語としてはそれでいいのかもしれないが、もし臓器移植への問題提起だとしたら、ちょっと話が都合よすぎる。ドナーの家族が、移植によって臓器の一部でも生き継がれればいい、と理想的に判断してくれて協力的。問題はすべて、移植を認めていない当時の法律や俗物の医師たちに寄せられる。これでは正解は「臓器移植」と最初から定まっていて、問題提起というより移植推進のプロパガンダだ。脳死の問題が医者の正義感だけに託されている。あの俗物の医者たちが脳死判定する可能性を除外している。脳死の問題は、たとえばずっと病院で臓器を待っている好青年がいて、そこにほとんど脳死状態の怪我人が運び込まれてくる、なんてとき、閉鎖的な日本の病院世界できちんと厳密な脳死判定がされるだろうか、という不安があるとこだ。臓器提供をためらう家族をこそ登場させなければならないんじゃないか。それでいて手術後は意外とあっさりゴタゴタは処理されてしまって肩透かし。脇筋の、子連れ看護婦の熱血医者に寄せる、敬愛と自分に言い聞かせているような恋愛感情の描き方が、押さえながらも筋を通していて味わえた。子どもが母の日記を読み、仕事一途だった母にもこういう華やぎの気持ちがあったと知る展開になっているのも良い。最後の別れの場では、ずっと「怒っている」夏川結衣が年齢相応にドタドタと車に走り寄り、「私は本当は○○○○が好きなんです」と告げるところでホロリ。ロケをした港は、震災の被害を避けられたのだろうか。
【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-05-27 09:57:30)(良:1票)
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