| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 凧というのは、中国人にとって自由の象徴なのだろうか、このころのチェン・カイコーの作品にも、よく使われてた。笑顔笑顔の結婚式で始まるが、ジワジワと嫌な感じが迫ってくる。行進や集会や。けっきょく何人か「右派」を作り上げねば「整風運動」に反したことになってしまう空気。トイレに立ったすきにやられてしまう怖さ(PTAの役員選挙でもそういうことがあるそうだが、怖さが違う)。どこかいじめの構造ともつながってますな。そして家族を覆い出す病い。眼疾、旦那の胃病、次もふらつき、三番目も心臓病。直接の危害の前に、病いとして敗北していく人々。その中でだんだん成長していく子ども。校長をつるし上げるので生き生きとなる少年が描かれる。ここらへん、もしかすると継父も母も裏切って「正しい紅衛兵」となっていく結末を夢想してしまった。中国映画の文革反省ものって、被害者の視点が多かったでしょ。あの鉦や太鼓鳴らして、生き生きとした自分を手に入れた連中の側の物語ってのも欲しかった。日本の戦後の反戦映画も、庶民はみな被害者づらして、あの当時ハチマキ締めて生き生きしてた部分が、主体として描かれることが少ない。その視点からの点検がないと、愚行は何度でも繰り返されるんじゃないかと思ってて、中国も同じだなあ、と感じてたもんで、ちょっと期待しちゃった。でもなかなか描けないんだよね、そういうカタストロフは。カタストロフじゃないと、受け取られてしまう心配があるからか。ま、文革反省ものの定番的な展開になったが、定番を確定するのも大事なことだ。三番目のお父さんなんか、いい役だった。冷たそうでいて、最後に思いやりを見せる。そのぶん母親のキャラクターは、いまいち明確さに欠けた。お正月、花火と提灯の中でかくれんぼするあたりのリリシズム。
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-02-04 10:26:14)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |