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状況としては切羽詰ってはいるのだが、気持ちで乗り切ろうとする娘を描いて、『川の
底からこんにちは』の流れを汲んではいる。あちらが中小企業という場だったのに対し、こちらは長屋が舞台。社会に対して攻める立場の企業と、社会から守る立場の長屋の違いか、どうも切れ味が悪い。「いい風吹いたら、そのときドーンと」と風待ちの姿勢を基本態度にしている。そもそも、この長屋世界を持ってきたのがパロディなのか、本気なのか、はっきりしない。福島の災厄で「地域の結びつき」が破壊されることの傷ましさを私たちが痛感していたときだから、ここで長屋ユートピアを夢想したい気持ちになるのは分かるけど、もう私たちは長屋暮らしの鬱陶しさも十分知っており、何も地下に不発弾はなくても、最初のアパートで引越してきたばかりの隣人のように警戒感抜きの態度は取れなくなっている。ラストで何もない福島に行くのは、もうそういうものが非現実的なユートピアになってしまっているってことの確認なのか。ここらへん、マジかパロディかよく分からないんだ。タクシー料金踏み倒す女が、粋だ粋だって言ってるおかしさを笑えばいいのか。石橋凌の店で男二人が陰気にカウンターに立ってる図と、子ども時代のヒロイン(大野百花嬢)はよかった。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 5点(2013-08-15 09:34:34)
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