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日本に紹介されるトルコやアフリカの映画では「土地の掟」の苛酷さがしばしばテーマになる。日本にはなかったのかっていうと、正面からぶつからなかっただけで、曖昧に受け入れたナアナアの民主主義の裏で、「因襲」は「世間体」などと姿を変えて生き続けた。『青い山脈』だって『砂の女』だって、けっきょくその日本の社会の閉鎖性を描こうとしており、渋谷実もそれをたびたびテーマにした。戦前の『母と子』の男性社会批判の視線は、本作でも主人公の妻である淡島千景にある。ただせっかく森繁の解説者を導入するという秀逸なアイデアを用いたのだから、村の渾沌をドキュメンタリー的に提示した前半の手法で全編を貫く勇気が欲しかった。後半は伊藤雄之助が裁き手になって、分かりやすいドラマになってしまう。ま、そうなりそうなところで、ストレプトマイシン売ってしまうなんて展開になり、あそこらへんの持って行き方はいいんだけど。チョボイチやってるとき父の死の知らせが入った中村是好の反応や、死んだバアさんの入れ歯を使う藤原釜足のギャグで笑う。奥様と呼ばれたくてアッパッパを着て階段の上に立つ三好栄子がやはり凄い。葬式のあと庭で踊るとこも。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-05-22 09:59:35)
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