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若いころ名画座ではイタリア映画が元気溌剌で、フェリーニの『サテリコン』『ローマ』『アマルコルド』あたりが繰り返し上映され、ヴィスコンティは配給権が当時あったのはそれだけだったのか『地獄に堕ちた勇者ども』と『ベニスに死す』の二本だけが繰り返され、若手監督ではベルトルッチの『暗殺の森』と『ラストタンゴ・イン・パリ』(私がサントラレコードを買った唯一の作品)、ヒネたのではフェレーリの『最後の晩餐』も好きだった(これのフィリップ・サルドの音楽に陶酔させられ、『ソドムの市』のモリコーネと合わせて「えげつないニ大名画の二大陶酔曲」として脳に刻印された)。そしてそのパゾリーニにも溺れ続けた。最近の人は分からないかもしれないが、ビデオやDVDのなかった昔は外国映画は配給権てのに縛られてて、配給会社が権利を買ってる間だけ上映できたの(たぶん今でもフィルムはそうなんだろう)。それが切れるとフィルムを返さなくちゃならないので、気に入った映画はとにかく日本で見られるうちに脳に焼き付けるまで繰り返し見ねば、という気持ちになってたわけ(あのころの観賞の気合いは、もう今では出来ない)。そんなころの思い出映画が『デカメロン』『カンタベリー物語』『アラビアンナイト』の三部作で、フランコ・チッティ、ニネット・ダボリなんて役者の名前を聞くともうそれだけでワクワクしちゃう。そして無名の役者さんたち。歯並びの悪い男、ニタニタ笑っている男、変に無理してるような・卑屈なような・不敵なような男たちの笑い顔。ひとつひとつの艶笑譚も楽しいんだけど、とにかく彼らに逢えるのが嬉しかった、それで見続けた。なんかほかの映画と違う広々した世界だった。
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 9点(2014-01-15 10:12:04)
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