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《ネタバレ》 冒頭の結婚式シーンはサスペンスのお手本ですな。まず記者団の闖入で波立てる。ひそひそ声、コロスとしての記者団と本舞台での演劇としての儀式。びっこの花嫁の入場、三橋達也の「殺す」という凶々しい言葉がはいるスピーチと、驚きをつなげながら、影の演出者である三船は一切しゃべらない。そしてとどめのケーキ入場まで、ほとんど完璧と言っていい。次の見せ場は、釜足の葬儀の場で志村のホンネのテープを流すところか。組織が個人を切り捨てる残酷、『酔いどれ天使』で、三船が親分の声を聞くマージャンの場の再現でもある。あと西村晃を追い詰めたりしてきびきび進むんだけど、後半主人公の内面の苦悩、香川への愛とかが出てくると、ちょっとネバついてしまう。彼の人間性を描いたがために、サスペンスとしてはモタついてしまう。でもこのスカッといくだけで押し切れないところが、良くも悪くも黒澤さんの姿勢で、明治人の求道精神と言うか、これはやっぱりこれで良いのだ、と思いたい。香川の善意が主人公を窮地に至らしめるってのは、次の『用心棒』なんかでも繰り返されるモチーフだな。森雅之がエプロン着けてバーベキューやってる良き家庭人の姿を見せるあたりの怖さもいい。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2008-09-25 12:16:55)
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