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風に吹き散る桜で始まる。はらはらと散る情緒に対抗するように。また琵琶の響きを入れたことで、話に一歩退いた地点を作れた。少し離れることが出来た。とにかく一つの解釈にはなっている。忠臣蔵と女の争いを対比し、後者のほうにマットウなものを見ようとしている。ドラマを動かすのはお梅、彼女がここまで重要に扱われた四谷怪談はほかにないだろう。荻野目慶子の痴呆ぶり、ちょっとやりすぎかとも思うが、まあ見てて楽しい。この一家をほとんど魔物として描いたわけだけど、ラストで、でも彼らのほうが浪士らよりはマシと見えてくる。本当なら岩は武士のすべて、赤穂がたにも悪さをするべきなのだが、そこまでの裁き手にするとカレンさがなくなってしまうか。前半の伊右衛門のケダモノぶりは、ふと『仁義の墓場』などを思い出させた。決起の宴と結婚の宴とをヤマに持ってきたのは正しい、男の狂乱と女の狂乱、琵琶の響きが二つをつなげる。ラスト、実像となった伊右衛門と岩が、透き通る虚像の浪士たちを眺める場になるのではないか、とちょっと想像してしまった。忠義の世界のウツロさを映像で駄目押ししてもらいたかった。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-07-14 12:03:58)
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