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意外とシビアなホームドラマ。不幸な家庭というものは厳として存在し、ある子どもにとっては寄宿舎のほうが助かる場合もある、ってこと。母のにんじんに対する態度、特別原因がないだけに怖い(一応夫との間が冷えてから生まれた子どもってことか)。最も緊密な関係のはずの母と子においても「どうもウマが合わない」ということは生じ得るし、家庭は和気あいあいでという理想をあんまり高く掲げるのも、いかがなものか。原因がないんだから、母も改心のしようがなく、それぞれがそれぞれの不幸を守ったまま、父と子の間に光がほの見えるだけで閉じていく。その父と子が正常に相手を呼び合うラストが感動的。「フランソワ…」「お父さん…」。初めて母に反抗するシーンもいい。それまでの仕打ちにはビクともしなかったのに、盗みの疑いで少年の誇りを傷つけられるとこたえるわけ。全体子どもの捉え方が「けなげ」よりも「したたか」で、翌年の『操行ゼロ』やトリュフォーにつながっていくフランスの伝統なんだろう。牧歌調のシーンの美しさ、偽の結婚式後の行進、長く伸びた影、自殺しようとする池、どれも清澄さがあって素晴らしい。祝宴の中で取り残されていく惨めさが、それがあってクッキリする。にんじんがいざロープに首を突っ込んだときの震えの無惨さも見事。日本ではデュヴィヴィエは『望郷』に代表されるセンチメンタルな監督という評価があるが、それだけでもないんだ。
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-10-12 10:09:15)
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