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フェイギン一党が物語の中心に「やくざな連中」としてあるのに対し、カタギの人たちがその前後で「実直な労働」の世界を群舞で展開している。下町の労働者グループと屋敷町の物売りたちの世界。それが悪の世界よりも見どころになっている。ミュージカル映画で楽しいのは踊りそのものより踊り始めるときの緊迫・日常が非日常に移るスリルだが、下町ではオリバーたちが逃げ込んだ路地裏で女たちがキャベツを盛った籠をえっさえっさとこちらへ運んでくるところ。以下労働のリズムでダンスが繰り広げられ、肉や魚を振り回して配分していたり、地固めやってる男たちやらと楽しい。後半では舞台が屋敷町に移り、まず花売りの一人の朗唱があり、次第にミルク売りやイチゴ売りらと呼び交しあっていく(前半のオリバーを売り歩く雪のシーンの朗唱が思い返された)。ミルク売りの脚が揃って伸ばされ、労働がダンスに変容していく。ダンスはさらに子守たちや窓拭き連中に広がっていく。残念なのは悪の連中にこれに拮抗するだけの魅力がないことで、まさか倫理的判断でそうしてるのではないだろうが、フェイギンに縛り首のキワで生活している緊迫感はなく、どこか「愉快なおじいさん」に傾いている。せっかく悪の魅力を得意にした映画監督なのに、舞台ミュージカルの映画版として仕上げていた。
【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-03-13 09:35:19)
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