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昭和30年代、焼け跡の頑張りの時代に、さらに笑顔の時代の層が加わった。無表情で顔つき合わせてしゃべりまくる、ってのを増村の一つの型とするなら、その対極にモデルの笑顔がある。特定の何者にも向かっていない、漠然とした大衆に向けられたコマーシャル用の笑顔。その笑顔を裏打ちするのは、甘いキャラメル、子ども向けという姿勢、夢の宇宙服といった“やさしさ”で、それが宣伝合戦の苛酷を際立たせる。ただがむしゃらな姿勢だけで頑張れた戦後が、さらに複雑ながむしゃらさを要求してきた。高松英郎のモーレツ課長は、ちょっと“日本”を強調しすぎていたようにも思ったが、あの時代あんな感じだったのだろうか。ザラリとしたユーモアがよく、ストーリーの上ではこの喧騒をマスコミぐるみ批判しているわけだけれども、作者は半ばここに溢れているエネルギーに感嘆しているようでもある。野添ひとみの気味悪さが圧倒的。この空疎な笑顔の時代は、現在に至るまで続いているわけだ。この頃の映画はしばしば途中に歌がはいるが、そういう約束事があったのか。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-07-01 12:10:12)
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