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子どものころは師走になるとだいたいどこかのテレビ局で忠臣蔵をやっていた。ぼんやりとこの話の元は歌舞伎なんだろうとか思って親と一緒に見ていた。そののち長じて歌舞伎の仮名手本忠臣蔵を見ると、かなり違うのに驚いた。刃傷や城明け渡し、京での遊楽などの場はあるものの、映画で繰り返し見た細かなエピソードは全然なく(一晩での畳替えやら、赤垣源蔵徳利の別れやら)、忠臣蔵物語のネタはどこから来たものなんだろうと気になった。当時一番近いと思えたのは三波春夫の浪曲歌謡曲の世界で、映画はこういうのの寄せ集めなんだろう、と思い直した。ちゃんと調べたことはないが、それが近いのではないかと今では思っている。けっこう好きなエピソードは内蔵助が別の武士の名をかたって江戸へ向かう途中、本物と遭遇してしまうやつ。映画では大物をいつも起用していて、本作では鴈治郎だった。これ「勧進帳」をヒントにしてるんではないか。偽装がばれそうなトラブルと、それを「察してくれる」人情の世界、のヴァリエーションになっている。庶民の勧進帳人気で、ああいうのを一つ語ってみたいと講談師なり浪花節語りなりが思い、忠臣蔵を背景にこしらえた一幕が、スタンダードになっていったのだろう、そしてこういう忠臣蔵サーガが次第に結晶していった…、そんなふうに考えている。一本の映画として面白いとは言えないが、知り尽くしている物語に載せて、オールスターを見渡せる楽しさ(たとえば紅白歌合戦のような)が当時はあったと思われる。
【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-12-23 09:39:35)
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