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《ネタバレ》 この監督の『ジャズメン』てのは、この国には珍しい屈託のない映画だったが、これはちゃんと屈託のある映画。国は崩壊直前で、どうしても歴史に目がいってしまう時期だった。博物館の蝋人形たち、向こうの人が見ると、なんかいちいち笑いが起こったシーンだったかもしれない。その精気のない歴史の展示。馬鹿馬鹿しくもあり、奥に悲痛さを秘めているようでもあり、動けなくなった哀れな国民たちの自画像でもある。ケーキのシーンなんか充実。コックの自殺がある。あの国は自殺に見せかけた殺人に近・現代史は彩られており、改革派と保守派の軋轢が背後にあるわけだが、主人公は改革派の目玉に祭り上げられて当惑しているみたいなのがおかしい。今までのあの国の映画では集団の動きの勝ち負けが重視されてきたが、ここでは個人の当惑が描かれている。彼はロックで踊るより、民謡を歌いたがっていた。そういう保守的人間が改革派の旗になってしまう悲痛さ、でもある。改革でも保守でもどっちでも同じ、個人がグループに追いやられてしまう動きの連なりが、つまり「歴史」ってこと?
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 6点(2013-09-21 10:11:05)
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