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《ネタバレ》 反戦映画というより反軍映画の傑作だろう。いざとなると何の役にもたたないどころか、己れの保身ばかりを考え、民衆にとって危険きわまりない存在だということが、よく分かる。この作品最大の仕掛けは、原保美と藤田進の対比だろう。“原”型の軍人は戦後幾多の反戦映画に出てきたタイプ。さんざん民間人を使役したあと追い出してしまう。リアリティはあるが、いささかパターン化されてきていて、観客へのインパクトは薄れていた。“藤田”型は戦前戦中によく描かれた国策映画に出てくる「優しい日本の軍人さん」の典型パターンだ。藤田自身がそういう役を頻繁に演じていた。この戦前戦中にパターン化されていた実に優しい軍人が、最後の洞窟で投降勧告に応じようとする女生徒を射殺する。日本軍によって自分の生徒が殺されたことにまだ分からずにポカンとしている先生のカットが二つぐらい続いて、米軍の爆弾が投げ込まれる。ここらへんの畳み込みが素晴らしいのだが、何より軍隊の本質を描き切っている。藤田はこの出演で、彼の戦争責任を償ったと思う。津島恵子の先生の耳が聞こえなくなるのもうまい。生徒たちの歌声が聞こえなくなり、米軍の投降勧告も聞こえなくなる。追い詰められて軍の判断にしか自分を任せられなくなっている沖縄の人たちが重なっている。もちろん軍と民間人との関係は、そのまま本土と沖縄の関係でもあるのだけれど。シーンとしては晴天でキャベツを放り合うところなんか、ラストから振り返ると哀切。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-11-16 09:54:41)
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