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《ネタバレ》 知的好奇心を刺激する複雑な構成ながら、緊迫のアクションシーンを交えることで映画的なカタルシスや娯楽性をも兼ね備えており、扱う題材は神秘的ですらある。そこに過去の過ちに苦悩する男の葛藤が絡みつき、哲学的な問題提起やメッセージをズドンと突きつける。「インセプション」は素晴らしい映画だ。そしてそれはアイデアに尽きる。「何パターンかの夢」を「夢の階層化」、「耳は起きている」を「音楽の合図」、「夢の中にいても現実世界での影響を受ける」を「影響が重なるため深層に行くほど不安定」といった具合に、誰もが経験したであろう夢についての不可思議な感覚を独自のルールで見事にまとめ上げた。オリジナル脚本を手掛けたノーランの頭は一体どうなっているんだと思わされるほどの緻密な世界観だ。彼の頭の中にふと芽生えた夢についてのアイデアが、ジワジワと長い時間をかけて脳内に感染していき、この世界を構築していったのだろうか。演技も音楽もアクションも視覚効果も特筆モノだが、それにも増してドラマ部分とラストがまた素晴らしい。観ているものには賛否の分かれるものかもしれないが、夢に囚われた妻を救おうと試みたインセプションで家族を失い、自責の念に苛まれる男にとってあのラストはハッピーエンドではないだろうか。愛する妻に別れを告げることで彼は待ち焦がれた夢(=ゴール)の夢を見ることが出来たのではないのだろうか。「夢なら覚めないで」というが精神世界での幸福は真実のモノなのか考えさせられる幕切れの後も友人との話題に事欠かない、そして鑑賞の度にこの作品の深部が見えてくる。これこそ一級のエンターテイメントだ。
【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 9点(2010-07-26 04:53:36)
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