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《ネタバレ》 「極限」。魔の海で展開する生還へのエクストリーム・ウェイズ。極限と言う言葉がまさに相応しい、ポール・グリーングラスの新たな傑作である。
実話モノという触れ込みで鑑賞したが、今になって思えば、その緻密に計算された構成に唸らされる。 序盤のボートチェイス、海賊侵入後の船上の駆け引きから、救命艇での攻防までがノンストップで進んでいく。目まぐるしく変化するシチュエーションだが、その導入は全く無理がなく自然であり、数々の事象が整然と処理されていることに気づく。実際に起きたこの事件を、入念に分析しまとめ上げるその手腕は、ジャーナリスト出身のグリーングラスだからこその技だと言える。 また、監督は「ボーン」シリーズなどのエンターテイメント作品においても良作を作っており、「面白く見せる事」についても非常に長けている。キャラクタについては、必要最低限ながらインパクトのある描写でしっかりとキャラ付を行なっているので、娯楽性とテンポを損ねることはない。 例えば海賊達には、腕が伸びる奴も喋るトナカイもいないが、しっかりとキャラが立っている。悲劇の激痩せリーダー、ギョロ目の怒りんぼさん、心優しき裸足少年、運転担当の空気海賊など、ある意味分かりやすい人物象で描写されている。故に軍介入によるパワーバランスの崩壊で、何をしでかすか分からない不安定な状況がこの上なくスリリングに昇華できている。 狭い救命艇に海賊4人と一緒という、ジグソウでも仕掛けるのをためらいそうなソリッドシチュエーションだが、 「前はギリシアの船を襲い大金をせしめた。」 「ではなぜ今ここにいるんだ?」 という会話劇では、この事件の背後にあるグローバリズムの弊害がちらつく。その見せ方にも徹底したフェアネス精神が貫かれており、やはりジャーナリストでもあるグリーングラスの性分を伺わせるファクターとなっている。 「ボーン」シリーズで、グリーングラスは自らのスタイルを極めたと勝手に思っていたが、この監督はまたも凄まじい程の極限をみせてくれた。改めて演技派を印象付けたトム・ハンクスの熱演も忘れ難い。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 8点(2013-12-18 00:22:38)
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