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《ネタバレ》 視聴後しばらくこの作品のテーマが見出せなかった。仕事をし、恋愛をし、したい事だけをして終わっていく、それだけだ。なぜそれだけなのか考えてやっと気付いた。「それだけ」を貫く二人の映画だったのだ。二郎は飛行機を作りたい。少年時代に抱いた夢をひたすら追い続ける。それが戦争に使われる悲しさ辛さを孕みつつも、彼はブレない。余命いくばくもない女に惚れ、逢瀬が長続きしない事が分かっていても構わず添い遂げる。「感染ります」と言われても構わずのしかかる。結核に伏す妻の前でもタバコを吸いたがる。菜穂子も自分の状態が分かっていながら想い貫く。忙しい夫の傍に居ようとする。仕事に従事する夫の手を握って離さない。我が身を案ずる夫の心配何のその、抱かれる事を欲する。そして限界が近付くや、相談も無しに夫の元を去る。自らの意思を貫いて生きる二人が出会い、束の間寄り添い、別れて終わる。ラスト、妄想の高原で再会する二人には微塵も寂しさ未練を感じない。爽やかな笑顔で満足して終わっていくのだ。この二人の「己を貫き満足して終わる」姿こそが、宮崎駿の生き様、価値観、願望そのものだったのではないか。映像も素晴らしかった。婚礼の儀にめかし込んで現れた菜穂子の美しさに、思わず前のめりになって画面に齧り付いてしまった。宮崎作品のヒロインは後ろを振り返る事なく、ひたすら前を向いて突き進む。宮崎駿はとても良い恋愛観・女性観を持っている。それを作品に投影し、共感させる豊かな表現力に改めて唸らされた。世代を超えて同じ時代に生きられた事、その作品に触れられた事に感謝したい。
【にしきの】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-06-20 04:34:12)
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