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《ネタバレ》 【皮肉】①西の動機は父を死に至らしめた悪への復讐だが、少年時代の西は父を憎んでおり、父の死後に初めて父を慕うようになった。②悪を裁くためには自らが悪にならなければならない。③西は復讐目的で佳子と結婚するが彼女の純心さに触れ、愛してしまう。最終的には佳子を狂わせてしまう。④佳子の純心さが仇にあり、西の破滅を招く。桂子が狂うことが父親への復讐となる。⑤悪の代表として描かれる公団副総裁だが、彼も政治家という巨悪の前では下っ端にしか過ぎない。巨悪は姿さえ見せない。⑥悪を成す人も家庭に帰れば家族思いであり、良き父親である。善人も環境により悪に染まってしまう。【西の敗因】①検察に密告していたのに、途中でやめている。入手した情報をその都度検察かマスコミに流せばよかった。マスコミをうまく活用していない。②和田に告発文を書かせなかった。③守山の金の入っている壺や預金通帳の在処を知りながら確保しなかった。④隠し帳簿などの決定的証拠をつかんでいない。⑤守山を拉致してから時間をかけすぎ。兵糧戦法は手ぬるい。告白をテープ録音してない。⑥背後の政治家に対して無関心でありすぎる。官民政の癒着。⑦ウェディグケーキはやりすぎ。自殺した役人の身内の仕業とばれる。信頼されるまで待つべき。【感想】人物の掘り下げが深い。妹思いの兄。純真な佳子。妻を愛してしまう西。西の父に対する愛憎。白井の気の弱さぶり。上司を裏切れない小役人。西と板倉の友情。岩淵の娘に対する愛。どれも有機的に物語に絡む。重厚で破綻の脚本は見事。汚職と復讐と恋愛と家族愛と友情を描きつつ、人間の欲望と弱さ、社会悪と正義の矛盾を浮き彫りにする。バッドエンドは社会の暗部を際立たせるためだが、後味が悪すぎる。西は殺されるが、思わぬ証拠で汚職も暴かれる結末で齟齬が無い。再開した西と佳子が仕切石を隔てて向き合う演出は秀逸。西の口笛がひどく悲しい。◆西の殺された証拠はある。服、注射器、アルコール瓶等の遺留品、格闘の跡、静脈の注射跡。車を列車にぶつけたのだから、目撃者もいると思う。板倉が警察に駆け込んですべてを話せば警察は動く。守山の失踪で警察が動いている筈。◆女性は弱くて何もできない存在として描かれる。女性の強さも描いてほしかった。西の母、岩淵の妻は省略されている。愛人の子供と暮らしたい老いた本妻の気持ちは理解が難しい。
【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-10-19 06:10:43)
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