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グリマーマン のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 グリマーマン
製作国
上映時間91分
劇場公開日 1997-01-18
ジャンルアクション,サスペンス,犯罪もの,刑事もの
レビュー情報
《ネタバレ》  「先生、良いんですか?」
 武道場の裏に、僕と先生は、集まった。貝殻の塊を転がしたような音が、錆びた掌が揺れる立木から漂ってくる。あとは、靴が地面をこするだけだ。砂利を踏みしめる足は、少し震えた。
 小さく富木流と書かれた道着を正しく羽織った男は、講師の事務所で僕の誘いを断ることも無く笑ってぼそりと一言、
「それじゃあ四時に」
 と言った。

 実習に合気道という時間が存在した。僕はそれを履修する事は無かったが、放課後の練習をぼうっと眺めるその目には肝心な物が伝わらない。
 映画のあれは、本当に強いのか?クラスメートに何となく尋ねた疑問は、体育実習をうけた彼から師範に伝わった。伝わってしまったのは事故のような物だったが、かまわないと思った。むしろ、そこに実戦性があるのならどう言うものか見てみたい。思わず口角は上がっていた。

 袴を穿いて、裸足の師範は左右に腕をなめらかに動かしながら、呼吸をしている。ただ呼吸をしているだけなのに神秘的な動作であった。僕は見とれる。落ちてくる赤い楓の葉は闘争心に火をつけた。ゆらゆらと足元に惹きつけられる数瞬に、心に波を立たせる。
「どうやって始めよう」
 右足を前に音も無くずらす。
「相撲みたいでいいんじゃないですかね。靴はどうします?」
 隙を探す。
 右足、
 左足、
 股間、
 脇、
 肩、
 腕、
 顎、
 額、
 「好きにしたら良い。それで勝てると思うんなら」
 それじゃあという返事を保留する言葉を返すと、彼の腰を落として力がどこかに消えてしまった姿勢に、今、と思う。
 瞬間に、左足は前に出る。土が抉れた。ういっ、腹の底から発した声とともにコンビネーションを放つ。複雑に組み立てた手足の運動は、欲張らない。
 鎖骨と大腿を狙う拳と膝は、合気道には存在しない方法で組み討つ。

 次の瞬間だった。体重を乗せて殴り抜こうとした右腕を小手返しの型に組み込むと、軸を失った右足を古武術らしいすり足で抑える。一瞬僕は解放されたと感覚するが、それは入り身投げへの伏線だった。
 ラリアートを食らったレスラーのように、綺麗に打ち倒されると、そのまま裸締めにされ気を失う寸前でタップした。

 師範はいった。
「セガールは弱くないぞ。これくらいは、確実にやる」

 という勘違いと妄想をさせるインパクトがかつてのセガール様にはあった。
黒猫クックさん [DVD(吹替)] 6点(2013-08-08 23:18:56)
その他情報
作品のレビュー数 47件
作品の平均点 4.81点
作品の点数分布
000.00%
124.26%
2612.77%
348.51%
4612.77%
51123.40%
6817.02%
7714.89%
836.38%
900.00%
1000.00%
作品の標準偏差 1.90
このレビューの偏差値 53.31
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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