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初めてこの映画を観た時は衝撃的でした。ストーリーは特筆するほどでもない刑事ドラマ。でも、伝わって来る違和感がハンパじゃない。一種キューブリックを彷彿させるような乾いたの映像だけど、膨大な予算と時間が注がれるアチラに対して、たいして予算も使っていない映像から強烈に発散される個性に驚いた。
今回、その個性の根源を見極めたいと思って気付いたことがふたつ。役者に表情が無い。そして、人物の背景を描写しない。本作の「説明的」な部分は、主人公の妹に知的障害があることくらいだろう。フツーの映画にはある情報が極端に少ないのです。だから、登場人物が何を考えているのか分からない。微笑を浮かべていても、その意図が不明で身構えてしまいます。それでいて、アクションと云うか、暴力はかなり思い切っている。感情を排して展開される暴力描写にはリミッターが外されているような怖さがあります。結果として、ものすごく不安定な心境を抱えて映画を観ることになります。次の瞬間、何が起こるか分からない緊張感がある訳です。 本作は、それまでの常識的な映画のコード、と云うより「邦画のコード」の破壊だったと思います。主人公の個性を描き、周辺環境を描き、置かれた状況を描く。そこから発生する摩擦でストーリーが展開し、主人公のブレイクスルーで物語が完結し、感動が訪れる。それがオーソドックスな「邦画のコード」です。好きな人もいるけど、比較的サラッと流れる洋画と比較して敬遠する人も多い。じゃあ俺が、そんな「邦画的」な湿気を削ぎ落とした映画を作ってやるよ、と言ったかどうかは知りませんが、いかにもこの監督の天邪鬼的性向が発揮された作品だったとおもいます。 実はその後の北野作品を観るにつけ、その傾向が最も際立っていたのがこのデビュー作だったと思っています。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-11-22 02:33:47)(良:3票)
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