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《ネタバレ》 本作はトリックとしての面白さに欠けるし地味なので凡作と評価されているようだが、この寒けがするような恐ろしい雰囲気は他のどのコロンボ作品にもないもので、一種特別な作品だと思う(強いて言えば「黒のエチュード」が多少似ている)。その原因となっているのが舞台となったこの古めかしい美術館の雰囲気であり、さらにはこの事件のずっと以前に起きたもう一つの殺人事件である。特に後者はコロンボによってその真相が解明されて行くことで犯人の心の闇が浮かびあがるような仕組みになっている。最後の場面、ジェニーに向かって「私がパパを殺したというのは嘘ですよ」と言い、コロンボに「嘘をついたんでしょう?」と犯人が詰め寄るのはほとんど脅迫のような懇願であり、絶対にジェニーにだけは真相を知られたくないという犯人の悲痛な叫びともとれる。だがこのセリフは単純ではない。なぜならジェニーを陥れたのはそもそも犯人にほかならないのであり、解釈が難しい。逮捕は免れないと思った犯人がこのときだけはジェニーを思いやってそう言ったのだと仮定しておこう。ポアロと違ってとことん筋を通すコロンボが常にも似ず「おっしゃる通り、嘘ですよ」と嘘をつくのは、あるいは犯人のその気持ちを汲んだようにもとれる。「コロンボさん、手をとって下さる?」というのは恐らくは犯人の感謝の気持ちであると同時に「どこへ行くにも殿方のエスコートが必要だ」という姉の言葉が下敷きになっている。全編に流れる音楽も雰囲気にぴったりだ。ああそれからもう一つだけ、この話は邦題より原題(「古めかしい殺人」)の方がいい。
【空耳】さん [地上波(吹替)] 7点(2009-06-18 05:02:51)(良:2票)
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