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《ネタバレ》 三人の不審者と、それを取り巻く人々の物語。三人のうちの誰かが殺人犯だが、謎解きは実はどうでもよかったりする。千葉編・東京編・沖縄編に分かれていて、前の2つには雨や夜のシーンがあり、陰鬱なシーンが続くが、若い二人が無人島に渡る沖縄編は、田中の開放的性格もあって、昼の快晴のシーンが続く。沖縄の青い海と空はひときわ美しく、人を疑うことを知らない濁りのない二人の心を表しているかのようだ。
泉が星島に着いたとき、米軍機が爆音とともに沖縄の青い空を切り裂くように飛ぶのは、後に彼女の心と体を貫く衝撃のメタファーだ。 辰哉は、父の反基地運動に理解がない。それで泉に「あんなことして、何か変えられるのかな」と言う。だがその同じ問いはほどなく「辰哉君言ったよね、あんなことして何が変わるのかって」という形で、自身に降りかかる。辰哉は、どうあがいても泉の心に寄り添えないという現実に打ちのめされる。この後辰哉は一人でボートに乗り、星島に行く。これは二人で過ごす最後のシーンで、おそらく二人は一生会うことはないのだろう。 辰哉の事件を知った泉は、引きこもりを脱し一人で星島に渡る。田中のいた廃屋には「米兵にヤラれてる女を見た 知ってる女だった ウケる」という消された文字があった。辰哉は田中を殺した動機を問われるから、泉を守るため文字を消したのだ。 泉は海に向かって駆けだす。自分の心の傷にとらわれ、辰哉の心の傷に寄り添うことができず、取り返しのつかない事態へと追い込んでしまった。彼女は浜辺で一人叫ぶ。無人島だから、彼女の苦しみと痛みは誰にも届くことはない。しかし彼女は自分の殻から抜け出し、外の世界に向かって叫んだ。沖縄の青い海は、どこまでも美しい。 【高橋幸二】さん [インターネット(邦画)] 7点(2025-05-25 09:44:41)
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