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《ネタバレ》 冒頭では生きている死人の様な男、渡辺。生き甲斐の無い人生。正に役所の書類にハンコを押す様な生活で、余命幾ばくも無い事が分かり、己の人生を振り返った時の虚無感。自分が誰にも必要とされない存在と分かった時の恐怖。観ていて本当に恐ろしくなってしまいました。ここがしっかりと描かれているからこそ、「ハッピー・バースデイ・トウ・ユー」の歌も心の底まで真に響いてくる。数ある黒澤映画の中で、人間ドラマを軸とした作品では最高傑作といわれていますが、それも納得できる素晴らしさだと思います。ブランコの名シーンに関しては言うまでも無いですね。観ているだけで涙が出そうになります。あとこの作品はお役所への批判がテーマであると、たまに言われたりしますが、個人的には違うと思います。責任をなすりつけ合うことや、人の手柄を横取りすることの浅ましさは、社会のどこの場面にも存在する様な普遍性のある事柄ですし、黒澤明は羅生門で同じことをそっくりそのままお役所とは関係無く描いているので。それにしても放蕩小説家の言葉ですが、私も来年から社会に出て働く身として、人生の下男では無く主人でありたいものです。
【民朗】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-12-11 00:04:00)
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