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《ネタバレ》 極寒の地であるために、ロシア語は口をなるべく開けずに発語できるように進化した言語だという説を聞いたことがあります。まさかフィンランド人も、なるべく無表情で生きて寒気に適応してきたのかな?そんなわけあるはずがない(笑)。なんていう妄想が浮かんでくるぐらい、少なからぬ登場人物がいるのに全員がほとんど無表情で、驚くべきことに誰一人笑顔すら見せない。ストーリー自体は、決してオフビートではないけどかと言ってシリアスというわけでもない、なんとも絶妙なバランスなんです。フィンランドの蟹江敬三と岸田今日子の淡いラブストーリーといった趣きなんですけど、やはりテーマは“敗者の人生やり直し”ということでしょう。過去のない=記憶がないというのが重要なプロットですけど、このフィンランドの蟹江敬三氏がほんとに記憶喪失なのかという伏線が埋められていて、あえてそれに回答を与えないカウリスマキの不思議なストーリーテリングはホントに彼らしい。冒頭の病室で、心肺停止したのに突然蘇って脱走するところからして「これは寓話です」と監督が宣言している感もあります。ホームレス状態から立ち直ってゆく過程も、決して平坦ではなく一歩前進・二歩後退という感じのもどかしさ。どん底に落ちた人生はあとは上がってゆけるもんだよ、と言ってもそんなに簡単なもんじゃないということなんでしょうが、ここは能天気なハリウッド映画とは一線を画する視点じゃないでしょうか。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-19 22:05:46)
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