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《ネタバレ》 オペラがはねてからブルジョアの邸宅の夜会に招待された20人足らずの彼の友人・知人。その屋敷の使用人たちは、主人たちが客を連れてくるのが判っているのに、なぜか制止されても勝手に帰宅してゆき、けっきょく執事だけが残される。夜会も終わり夜も更けていたのに、なぜか客たちは広間から出て行こうとはせずにザコ寝で過ごし、朝になっても広間から出てゆくことができない。屋敷の門前では警察や野次馬が集まる騒ぎになるけど、こちらも誰も門から中へ入って行こうとしないというか出来ない。食料も飲料水も底をついたブルジョワジー男女は、普段のスノッブさが消えてゆき本性剥き出しの集団と化してゆく… 自分が今までで観た中で、たぶんもっとも奇妙奇天烈な映画であることは間違いないです。部屋や門の境界に透明なバリアが存在して物理的に通過を阻止しているという設定なら単なるSFという感じになりますが、どうも心理的な何かが彼ら彼女らに作用しているみたいなんで、不気味感が高まります。冒頭で使用人たちは「明日はここに入れない」みたいなことを言いながら帰っていくのが不可解だし、邸内に羊やヤギそして子熊までもがうろついているんだから、もうわけ判らんです。実はブニュエルの作品はほとんどこれが初見みたいなものなのであまり語れないんですけど、これこそが不条理劇というものなんですね。登場するのがブルジョワジー階級と平民、そして舞台がブルジョアジー邸宅と教会となれば暗喩とすればベタなくらい判りやすいんですけど、室内を徘徊する手首などにはホラー的な要素すら感じます。ラストの教会のミサからのモンタージュも意表を突かれてしまいますが、ブニュエルはこのシュールな物語をホラーでなくコメディのつもりで撮ったんじゃないかと推測します。だとしたら、この人はやっぱ相当人が悪いですよ。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-06-01 21:48:35)
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