Menu
 > 作品
 > シ行
 > 疾走
 > Nujabestさんのレビュー
疾走 のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 疾走
製作国
上映時間125分
劇場公開日 2005-12-17
ジャンルドラマ,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 干拓地という、言ってみれば”海の生物の墓場”が、美しく撮られていたことにまず感動した。そして、鬼ケンと茜は、生き物の匂いを充満させていて、その殺伐とした雰囲気に良い味を添えていたと思う。
シュウジにとって、沖で出会った人たちとのふれあいと、その地を踏みしめて走る瞬間だけは、生の実感に溢れていたのではないか。

この映画における、学校で起こるいじめと、社会で起こっている部落差別には差がないと思う。暴力の執行者である、いじめっ子、ヤクザ。それらを静観するクラスメート、噂をする住人。犯罪者の弟だからとか、沖に住んでいる人だからとか、そんな理由で暴力がまかり通る。閉塞した土地では、それほどに血や土地は重く、自分より、上なのか下なのかで暴力の方向は決まる。人類史とは、血とともに、暴力を継承してきた歴史でもあるのだと思う。
ではそのような暴力に立ち向かうためには、どうすればいいのか。シュウイチのように下層に継承するか、シュウジのように上の階層の人間を殺すのか、はたまたエリのように心を殺して耐え抜くのか。神父の弟が問うたように、己の肉体を殺すという選択肢もある。しかし、その答えは、これだけではないはずだ。人間と犬は、きっと違う。

兄が家を出て行く瞬間の、「早く家に入らないと風ひくぞ」のシーンはぞっとするほど怖い。兄との繋がりが断ち切られた瞬間を、シュウジが皮膚感覚として感じる瞬間だから。同時に、両親との別れがほぼ描かれないことも怖い。言語を捨てたシュウジの放った遠吠えは、観賞後もずっと頭の中を反芻して離れなかった。
Nujabestさん [DVD(邦画)] 8点(2010-10-30 18:12:05)
その他情報
作品のレビュー数 22件
作品の平均点 7.18点
作品の点数分布
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
414.55%
5313.64%
629.09%
7627.27%
8627.27%
9313.64%
1014.55%
作品の標準偏差 1.50
このレビューの偏差値 53.65
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
疾走のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS