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グラン・トリノ のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 グラン・トリノ
製作国
上映時間117分
劇場公開日 2009-04-25
ジャンルドラマ,犯罪もの
レビュー情報
《ネタバレ》 味わい深い映画だ。反戦に通ずる「現代アメリカの恐怖の克服」の物語が裏で流れていると感じた。マイケル・ムーアは、ドキュメンタリーで「恐怖による病的な自衛が暴力(銃)をうむこと」に対しての警鐘を鳴らしたが、イーストウッドは同じことを物語に溶け込ませて表現し、その克服法を示している。
この作品の厚みは、筋を面白く語りつつ、様々なメタファーらしきものを原始的な行為を交えて配置してることにある。神の前でアメリカを憂う所から始まり、芝生(国土)を守る争い、貰った食べ物を食べる行為、祈祷師に現状を覗かれ、そしてモン族の土地の心臓部でもある地下室(心の中)へ導かれる。その最深部でウォルトにとって救世主とでも呼ぶべきタオが佇んでいる。彼だけは民族の風習を押し付けない。固くなだったウォルトの心は、受容され、知恵(技術)を伝えることで、解きほぐされていく。物語の中盤では、反対にタオを自分の暗い地下室(心の中)に少しずつ招き入れる。冷蔵庫(重荷)を共に運び出し、大事にしまっていた勲章(罪)を継承し告白する。そしてそのままタオを、地下室に閉じ込めてしまう。大事な宝物でもしまっておくかのように。この物語が発するエネルギーの源泉は、寓話的空気感がありながらも娯楽的に筋を通している所で、神秘と慈愛に満ち溢れていると思う。上映中はストーリーとイーストウッドの花道的な意味で泣けて仕方がなかったが、無意識の視覚的イメージにも感情を大きく揺さぶられていたことが分かる。もちろん演出に拠る所も大きい。
クライマックスの復讐のシーンでは、住民(世界)の面前で恐怖の克服をどう解決したのか判明する。そこに神父(宗教)は立ち会えない。それができたのは、銃(暴力)でもなく、神への懺悔でもない。ウォルトはタオと協力して冷蔵庫(重荷)を運び出し、神父にではなくタオに対して告白した。そして恐怖を克服し殺されてしまったけれど、悪は罰せられ、勲章とグラントリノを残した。後者が何のメタファーだたのかを考えると、この作品はきちんと答えを示してくれたことが分かる。反戦的で、すんでの所で宗教への不信を表明する隠された物語は、アメリカ人によるアメリカ人の為に作られているものなのかもしれない。
Nujabestさん [DVD(字幕)] 10点(2010-02-12 08:42:49)
その他情報
作品のレビュー数 289件
作品の平均点 7.88点
作品の点数分布
010.35%
100.00%
210.35%
331.04%
420.69%
5186.23%
6269.00%
75217.99%
87826.99%
95619.38%
105217.99%
作品の標準偏差 1.65
このレビューの偏差値 57.81
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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