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《ネタバレ》 手持ちカメラのラフカットをめまぐるしい勢いで繋げたカット割りの映像を一つのシークエンスとして見せる演出。これぞグリーングラス監督の「ボーン演出」の真骨頂。それがもたらすものはリアリティよりも圧倒的な「臨場感」である。正に超一流の工作員であるボーンの本能で働く頭脳と無駄の無い行動が観客にビシビシと伝わってくる駅構内での追跡劇。それと並行して進むCIAの作戦室内での職員達の動き。彼らを捉えるカメラは撮影しているという印象を全く与えない、ライブ中継しているかの様な臨場感。デビッド・ストラザーンを筆頭に役者陣の見事な演技によるところも大きい。ボーンがロスを守って要員達を倒すまで、息つく暇も無い程の怒涛の展開に終始物語に引き込まれ、圧倒された。それはまるでパズルが一つずつはまっていくかの様な高揚感が得られ、計算し尽くされた緻密な演出にあると気付くのだ。CIA職員達の作戦に関わる姿はさながらモニター越しのシミュレーションゲームの様な冷淡なもの。暗殺さえ簡単に指示するだけ。ボーンとデッシュの工作員同士の現場の激しい格闘の熱は彼らには計り知れないだろう。その対比の描き方もボーンの手強さを強調している。また、この作戦が国益の為の必要悪であったり、ノアの言う様に「部外者が後から非難するのは簡単だ。」という台詞からも否定し難い部分もあるんじゃないか、と考えさせられもする。ボーンがビルから転落し遺体は発見されていない、というニュースを聞いて思わず笑みがこぼれたニッキーの表情が印象深い。水の中で目覚め、泳ぎ出すボーンの姿は母胎内の羊水から新たに生まれ変わる暗示の様である。再びマット・デイモンが演じるジェイソン・ボーンが見たいと思わせる、良いラストシーンだったと思います。
【miki】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2012-04-25 21:07:51)(良:2票)
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