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《ネタバレ》 東宝特撮の「変身人間シリーズ」に先行する(または含まれる)怪奇映画とされている。キャバレーと犯罪集団、歌手が訳あり風の美女で裏町のアパートに住むという設定は「美女と液体人間」(1958)に共通する。
透明人間など今の感覚ではありきたりの題材のようだが、しかし劇中の偽透明人間の覆面(包帯?)姿が、当時すでに出来上がっていた透明人間のイメージだったらしいのに対し、この映画ではまた違った透明人間像を提示してみせている。顔の見え方などに無理はあるが突っ込まない。 物語の展開として、最初に死んだ男の遺書からもう一人の存在が知れ渡り、それを利用した強盗事件が頻発して社会不安が広がる流れはスムーズだった。事件に関わった新聞記者は良心的な人物だったらしく、主人公が疑われて迫害されることにならなかったのは安心できた。 身近な人々を脅かす犯罪集団に対し主人公が透明人間として立ち向かうことになるが、終盤の格闘はみな悪人側の一人芝居で、正義のヒーローの姿がないのがユニークともいえる。一応の特撮映画らしく、ラストでは工業地域の大型タンクが爆発する場面も入れてあった。 人間ドラマとしては孤児の少女、キャバレーの歌手との交流が中心になる。少女は外見と無関係に主人公を慕い、歌手は主人公の姿を知った上でなお好意を寄せていた。日比谷公園でいきなり相思相愛になったようなのは唐突だったが(役者の年齢差が20歳程度)、この3人で家族になれればという思いも生じなくはない。 しかし最後の切り上げ方がいい加減で(よくあることだが)、何でオルゴールがあの場にあったのか、その後に少女が受け取れたのか不明なのは不満が残る。聞こえた気がしたということは、実物は結局届かなかったということなのか。取ってつけたような爆発はいいからドラマとしてちゃんと締めてもらいたかった。 ただ主人公が善良な人間だったことで、比較的いい印象の映画ではあった。 その他、昭和29年の東京で目についた点 ・タクシーが左折する際に、車の左側に出たのは矢羽式の方向指示器というものらしい。 ・街中に「静粛運転地域/必要外(?)警音器を鳴らすな/みだりに鳴らすと罰せられます/築地警察署/築地署交通協会(?)」と書いた看板が立っていたが、背景音ではやたらにクラクションが鳴っていた。 ・公衆電話の使い方を丁寧に誘導する説明が書かれていたのは感心した。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 6点(2025-07-19 14:52:41)《新規》
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