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《ネタバレ》 透明人間など今の感覚ではありきたりの題材のようだが、特撮映画としては円谷英二の参加もあり、大映最初の特撮??とされる「虹男」(1949)と同年の公開である。技術的には後の円谷特撮全盛期からすると普通だが、それよりネコが室内をうろつくとか犬が反応するなど撮り方での表現が見られる。無人のサイドカーが神戸の中心街を抜けて「須磨街道」を走って行くのを追う映像は面白かった。
物語としては、謎解きという面での面白味は特にない。人間ドラマは所長令嬢と所員①②の三角関係的な構図になっていて、うち本命は所員①だったが所員②も細面のイケメンで、副作用がなければ真面目な男だったろうから選択肢として遜色なく見える。この所員②がいる場所で、令嬢からあからさまな好意を寄せられた所員①が困ってしまって狼狽気味だったのは笑った。 社会的なメッセージとしては、科学に善悪はなく、使う者により善にも悪にもなる、という意味の文章が二回出る。「ゴジラ」(1954)に先立ち警鐘を鳴らした形だが、それはそうとして個人的な感覚でいえば、現代では科学という言葉自体に胡散臭さがあり、中立で無私な存在とはとても思えなくなっているので懐疑が必要と思われる。 以下個別事項: ・神戸が舞台で「元町」「三宮」「須磨」といった地名が出る。大映京都の制作とのことで、外部情報によれば実際に神戸で撮影されたらしい。「深道閣/闊天洞」と書かれた隧道は現在もあってストリートビューで見られる。なお関西弁の登場人物は1人だけだった。 ・戦後4年目の映画だが、「タカラ歌劇団」なるものの公演に「ファン少女」(配役名)が集まるなど、都会的で上流寄りの華やかな雰囲気がある。「火垂るの墓」の終盤に出た良家の子女の世界のようだが、偽の透明人間が殺された瓦礫のある場所は戦災跡地の表現かと思った。高価な宝飾品を売却するのも戦後の混乱の関係か。 ・「花くらべ狸御殿」とは何のことかと思ったが、大映映画で狸御殿シリーズというものがあったらしい。「狸御殿」という言葉は「この世界の片隅に」にも出ていたので戦中時点から知名度があったと思われる。 ・登場人物について、所員②の妹がショートヘアの歌劇団員なのは演者本人そのままのイメージと思われる。所長令嬢(妹)は女学生の屈託なさが印象的だった。所員①にはこれから超低反射素材を地道に開発してもらいたい。 【かっぱ堰】さん [インターネット(邦画)] 5点(2025-07-19 14:52:40)《新規》
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