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《ネタバレ》 吉川英治の小説を原作にした映画の続編である。最初に6分程度の「前篇解説」があるので、正・続というより全体を二分した前後編のうちの後編という扱いになる。今回は原作のうち「大盗篇」「恋愛篇」「同車篇」に相当する。
この後編では、恋心に悩む主人公がやっと法然上人に師事し、その教えのもとで僧侶として妻を持つことになる。そこまでで終わりなので、現代的にいえば自由恋愛を称揚する青春賛歌ではあるかも知れない。 しかしラストが変に宗教っぽい雰囲気で終わるので素直に喜べない。夫婦二人の朝食を前に主人公が面倒くさい話を始めたりするので、いいから早く飯を食えと言いたくなった。 また原作との関連ではどうも半端に終わった感がある。仮にこの後編も前編程度の長さだったとすれば、その後の念仏門への弾圧で主人公が流罪にされるところまでを扱うことで、これを機に広く地方へも布教しようという、主人公の生涯に関わる新しい希望を持たせることもできたはずである。ちなみに弾圧のきっかけを作った人物の名前(松虫、鈴虫)が、一部のキャスト情報には載っているが完成作には登場しないといったこともあり、実際そのような予定だったが短縮したかと思わせる。 また特にこのタイミングで切ったため、その後に大盗賊が改心する場面がなくなってしまい、いわゆる悪人正機の具体例を表現した場面が失われている。テーマを結婚に絞った形だが原作の映画化としては不足感があり、またそれならそもそも二部作にする必要もなかったのではと思った。長編小説の映画化は難しいということか。 以下個別事項: ・法然上人が口調と顔で圧倒的な説得力を出しているのはさすがと思った。ほかにも今でいう浄土宗の関係者が何人か出ている。なお「熊谷蓮生房」は平家物語でも知られた有名人である。 ・通報で駆けつけた六波羅の騎馬武者が速かった。ここは今でいえばジェット戦闘機が轟音とともに飛来したかのような印象だった。 ・最初から出ていた山伏は原作では最後に改心するので、途中で終わると出て来た意味がなかったことになるわけだが、実は三部作くらいで原作の最後までカバーする壮大な構想だったかと思ったりもした。そこまでやれば有名な河和田の唯円房も出て来る。 ・前編で大盗賊に誘拐された人物がその後に遊女になっていたのは、原作と違うが流れとしては自然であり、また前編序盤に出ていた遊女町との対比をなしている。この場面は、現代であれば社会悪の被害者を懐柔洗脳して問題が表面化しないようにしていると批判されかねないが、自分はそういうことは言わない。ラストではちゃんと元彼と一緒に念仏していた。 【かっぱ堰】さん [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-14 21:31:55)★《新規》★
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