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《ネタバレ》 過去の辛い出来事が原因で人を信じることが出来なくなってしまった天才チョコ職人、ウィリー・ウォンカ。彼の造りあげたカラフルでポップでユーモラスだけど、その裏側に恐ろしい狂気を感じさせる工場で日々作られるのは世界的な人気を誇るウィリー・ウォンカのチョコレートだ。そんな魅惑的なチョコを作る工場の作業員たちは、無表情でみな同じ顔をした小人族であるウンパ・ルンパ。彼らが用意した〝特別賞〟を求めてある日、一癖も二癖もある5組の親子たちがこの謎めいた工場へと足を踏み入れる。だが、賞品を手にすることが出来るのは1組のみ。脱落した親子には、どこか歪んだモラルによって次々と酷い制裁が加えられていく……。ともすると、とても陰鬱な映画になりそうなのに、天才ティム・バートンにかかると、まるでウィリー・ウォンカの魔法のチョコのように、どこまでも明るく楽しいメルヘンに仕上がってしまうのだから凄い。この映画の優れている点は、あくまで子供の目から見た鋭い社会批判となっているところだろう。通常大人が子供に聞かせるおとぎ話には、多くの場合、子供への教訓が含まれている。例えば、赤ずきんちゃんには「子供だけで森に行くと狼をはじめとする危険がいっぱいなので絶対にダメだぞ」。アリとキリギリスには「今が楽だからと仕事を怠けていると後でしっぺ返しを食らうぞ」。浦島太郎には「酒や女にかまけていると気づいたときにはもう老人で一人ぼっちになるぞ」……。でも、大人社会にはどうしても子供に説明できないような理不尽や不条理がまかり通っている。豚のように意地汚い子供は砕いて食べてしまうよ、いつも喧嘩ばかりの子供は大きなブルーベリーにするぞ、我が儘ばかりの子供はゴミ捨て場行き、屁理屈ばかりの子供はちっさくして指チョンだ。そうやって子供に教訓ばかり垂れるあなたたち大人はそんなに立派なのですか。良い子にしていれば僕たちは立派な大人になれるのですか。でも結局、あなたたち大人も僕たち子供と大して変わらないんじゃないですか。だってこの世界には今でも戦争や犯罪や貧困がまかり通っているじゃん――。子供たちからのそんな痛烈な社会批判が最後まで一貫しているからこそ、この作品は傑作となりえている。一時期低迷していたティム・バートンが見事なまでの復活を遂げた歴史的名作と言っていい。盟友ジョニー・デップの類稀なる怪演も本作の成功に多大な貢献を果たしてることも忘れてはならない。
【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 10点(2012-05-01 12:36:16)
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